Linuxは1991年、フィンランドの大学生リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)によって開発が始められたオープンソースのオペレーティングシステムである。当時、彼はUNIX互換の教育用OSであるMINIXを使用していたが、その制限の多さに不満を感じ、自身のコンピュータ(Intel 80386)上で動作する新しいカーネルを開発することを決意した。彼はこのプロジェクトを「趣味」としてスタートさせ、1991年8月、インターネット上のニュースグループに自身の試作品について告知し、協力を呼びかけた。

この最初の投稿とともに公開されたLinuxカーネルは、MINIX上でコンパイルと動作確認が可能であり、わずかな機能しか備えていなかったが、オープンソースとしてソースコードが自由に利用・改変・再配布可能であったため、世界中の開発者から注目を集めるようになった。やがてGNUプロジェクトのツール群(コンパイラ、シェル、ライブラリなど)と組み合わされることで、完全なUNIX互換のフリーなOS環境が整備されていった。この組み合わせは「GNU/Linux」とも呼ばれる。

1990年代中盤以降、Linuxはサーバー用途で注目を集め、安定性とカスタマイズ性から企業や教育機関にも導入が進んだ。また、1990年代後半から2000年代にかけてRed HatやDebian、Slackwareといった多くのディストリビューション(配布形態)が登場し、ユーザーのニーズに応じた多様な選択肢が広がった。2000年代に入ると、Linuxは組み込み機器やモバイル分野にも進出し、とくにGoogleが開発したAndroidがLinuxカーネルをベースとしていることから、スマートフォン市場での存在感も一気に高まった。

現在では、スーパーコンピュータのほぼ全てがLinuxを基盤として動作しており、クラウドサービス、ウェブサーバー、IoT機器、そして一般ユーザー向けのデスクトップ環境に至るまで、非常に広範な用途で利用されている。オープンソースの精神を象徴する存在として、Linuxは今も活発に開発が続けられており、世界中のコミュニティによって支えられながら進化を続けている。

参考文献・情報源

  1. Torvalds, Linus and Diamond, David. Just for Fun: The Story of an Accidental Revolutionary. HarperBusiness, 2001.
  2. GNU Project – Free Software Foundation (FSF)
  3. Linux Foundation – History of Linux
  4. Andrew S. Tanenbaum, Operating Systems: Design and Implementation, 3rd Edition.
  5. Wikipedia – “History of Linux”