江戸時代の識字率

識字率の概況

武士階級

  • ほぼ100%に近い識字率を持っていたとされます。
  • 武士は公務文書や命令書などの作成・理解が必要な職業であり、学問(特に儒学や兵学)を学ぶことが奨励されていました。

庶民(町人・農民)

  • 江戸時代後期には、**町人で60〜80%程度、農民でも30〜50%**ほどの識字率があったと推定されています。
  • この数値は、同時期のヨーロッパ諸国(例:イギリスやフランスの庶民で20〜30%程度)を上回るレベルです。

要因

1. 寺子屋の普及

  • 全国に**寺子屋(てらこや)**が広まり、庶民の子供たちも読み書きそろばんを学ぶことができました。
  • 江戸後期には、全国で1万5000〜2万校あったとされ、都市部だけでなく農村部にも浸透していました。

2. 印刷物の流通

  • 木版印刷による読本や黄表紙(小説類)、実用書、指南書、瓦版などが広く流通。
  • 読者層が拡大し、それに応じて読み書きの必要性が高まりました。

3. 商業・経済活動の発展

  • 商品経済の進展により、帳簿や書類の取り扱いが増加。
  • 商人や手工業者は、読み書き・計算能力が必須でした。

注意点と限界

  • 「読み」はできても「書き」はできない人や、難解な漢文までは理解できない人も多く、**「実用的な識字」**が中心でした。
  • 女性の識字率は男性より低い傾向にありましたが、上層町人や武士の娘たちには教育を受ける機会がありました。

結論

江戸時代の日本は、当時としては例外的に高い識字率を持つ社会であり、その背景には寺子屋教育の普及、印刷文化、商業社会の発展がありました。この高い基礎教育の水準は、明治維新後の近代化を迅速に進めるうえで重要な基盤となったと評価されています。